以前、「リバースエンジニアリングの種類と用途」のブログにてリバースエンジニアリングには『オートサーフェス』と『フルリバース(面構築)』の2種類があることをご説明しましたが、今回のブログでは『オートサーフェス』についてもう少し詳しくご説明したいと思います。
『オートサーフェス』とは
『オートサーフェス』とはSTLデータ(ポリゴン面)についてソフトが自動で面を作製して3DCADデータ化を行うことであり、そのデータは複数の四角面で構成されています。
元の形状の再現性は比較的高いのですが、ソフト任せで面を作製するため細かな形状が無くなったり形状が崩れたりすることがあります。
『オートサーフェス』が得意とする形状と苦手とする形状は以下の通りです。
■『オートサーフェス』が得意とする形状
- 一塊の形状
- 面の凸凹が少ない
- 貫通穴や深い穴が無い
(※参考例…達磨の置物、水筒、炊飯器等)
■『オートサーフェス』が苦手とする形状
- 薄くて鋭利なエッジがある
- 細くて長い形状がある
- 深い凸凹がある
- 貫通穴や深い穴がある
(※参考例‥包丁、金網フェンス、補強リブやボス等が多い部品等)
『オートサーフェス』が得意とする形状である飲料用のボトルについて、3Dスキャン⇒オートサーフェス化⇒キーホルダー製作を行ってみました。
使用設備・ソフトウェア
カメラ式3Dスキャナ
■メーカー:ZEISS社
■型式:ATOS Q 12M
■仕様:
- ポリゴン解像度:1200万画素
- 測定精度:±3~±26μm
- 点間ピッチ:12~124μm
- 測定レンズ:MV50、MV100、MV170、MV270、MV500
- スキャン範囲:50×35mm~500×370mm/スキャン
- 解析ソフト:ZEISS INSPECT Optical 3D Pro
リバースエンジニアリングソフト
■メーカー:3D SYSTEMS社
■型式:Geomagic Design X
■特徴:
- サーフェス抽出機能が優れている。
- オートサーフェスデータの作製ができる。
3DCADソフト
■メーカー:Robert McNeel & Associates社
■型式:Rhinoceros 7
■特徴:
- 自由曲面形状の作製が得意。
- サーフェスの統合ができる
作業工程
【測定対象物】
■製品A
- 某飲料メーカーのウイスキーボトル
- 材質:ガラス
- サイズ:□76×H218mm
■製品B
- 某飲料メーカーのペットボトル
- 材質:PET
- サイズ:φ69×H207mm
【作業工程①:3Dスキャン】
- 測定物にデータ合成用のポイントシールを貼る。
- 測定光が透過してしまう透明物には白い粉をスプレーする。
【作業工程②:3Dスキャンデータの原点位置合わせ】
3Dスキャンデータ(STLデータ)を原点(0,0,0)位置に移動調整する。
製品A
製品B
【作業工程③:3Dスキャンデータのオートサーフェス化】
リバースエンジニアリングソフト「Geomagic Design X」の機能を使用して、3Dスキャンデータ(STLデータ)から3DCADデータ(パッチ面)を作製する。
製品A
- 左から「3Dスキャンデータ(STLデータ)」「オートサーフェスデータ(構成線表示有り)」「オートサーフェスデータ(構成線表示無し)」。
- オートサーフェスデータの面構成は複数の四角面の集合体になる。
- ボトル口元の溝やロゴマークが再現されている。
製品B
- 左から「3Dスキャンデータ(STLデータ)」「オートサーフェスデータ(構成線表示有り)」「オートサーフェスデータ(構成線表示無し)」。
- オートサーフェスデータの面構成は複数の四角面の集合体になる。
- ボトル口元の溝やレリーフ形状、ロゴマークが再現されている。
【作業工程④:オートサーフェスデータの活用】
オートサーフェスデータをキーホルダーサイズに縮小してキーホルダーを作製。
まとめ
3DCADソフトによってはSTLデータをインポートできないものがありますし、機械加工においてもSTLデータに対応していない装置があります。オートサーフェスデータはIGESデータやSTEPデータ等の中間ファイルへの変換が可能ですので、3Dスキャンデータをオートサーフェス化することで様々な用途にご利用いただけるかと思います。
今回はオートサーフェスがしやすいボトルを事例としましたが、オートサーフェスに向いていない物もありますので、ご対応の可否につきましてはお問い合わせください。