プラスチックに炭素繊維が含有されたCFRP(炭素繊維強化プラスチック)材料は金属に匹敵する強度を持ちながら軽量であるという特性を持つため、航空機や自転車等の輸送機器をはじめ様々な分野で活用されています。
そうしたCFRP材料内部の品質確認として炭素繊維の積層状態やボイド(空隙)、クラック等の検査が必要となりますが、プラスチックも炭素繊維もX線の透過度が高い材料であるためコントラストがつきにくく、一般的にはX線CT装置での非破壊観察は難しいとされています。
当社ではサンプルに特殊な前処理を行い、観察の拡大率を高く設定できるX線CT装置を使用することで、CFRPの内部構造の非破壊観察を可能としました。今回のブログでは2種類のCFRPサンプルの炭素繊維の観察事例をご紹介します。
使用した装置
【メーカー / 型式】
㈱ニコン XT H 225 ST
【詳細スペック】
・最大管電圧:225kV
・最大出力:225W
・X線焦点サイズ:3μm
・検出器:16inchフラットパネルディテクタ
・最大撮影範囲:φ240×H200mm
(※分割スキャンで最大φ240×H760mmまで撮影可)
・最大試料寸法:φ560×H845mm
・最大テーブル搭載質量:50kg
【解析ソフトウェア(VG STUDIO MAX)】
座標計測、欠陥・介在物解析、繊維配向解析、多孔質構造解析
観察サンプルと観察条件
観察サンプル
『サンプル①』:織物シート状に加工された炭素繊維に樹脂を含侵させたサンプル
『サンプル②』:150μm前後の短い炭素繊維が11wt%程度樹脂に含有されたサンプル
(※『サンプル②』は3Dプリンタ「Mark X7」の材料「Onyx」)
観察条件
- 手順①…X線源に近づけるためサンプルを小さく切り出す。
- 手順②…サンプルに特殊な前処理を実施。
- 手順③…ホルダに固定してX線CT装置にて観察を実施。
観察結果
サンプル①
観察の条件と結果は以下の通り。
・サンプルサイズ:0.5×2×20mm
・観察範囲:3×3mm
・解像度:3.5μm
・幾何倍率:×56.83
炭素繊維が密に存在していたが、樹脂と繊維のコントラストが出ており、層ごとに繊維が折り重なってシートが構成されている様子が観察できた。
サンプル②
観察の条件と結果は以下の通り。
・サンプルサイズ:φ1.5×3mm
・観察範囲:3×3mm
・解像度:2.4μm
・幾何倍率:×83.241
ノイズが発生したために明瞭な画像にはならなかったが、炭素繊維のおおよその長さや配向を確認することはできた。
まとめ
いずれのCFRPサンプルでも炭素繊維の状態を非破壊で観察することができましたが、サンプル①とサンプル②のように繊維のサイズ・構造・含有量が異なると解像度も変わることがあります。そのため、目的のものが見えるかどうかを判断するためにはトライ観察から始める必要があります。
弊社にて保有しておりますX線CT装置は「微細な形状の高拡大率観察」「コントラスト差が少ないサンプルの観察」「金属と樹脂の複合材料サンプルの観察」を得意としておりますので、他の装置でうまく観察ができない場合にはご相談ください。