自動車部品等の精密部品の寸法検査は接触式の三次元測定機にて行うのが主流ですが、3Dスキャナのような非接触式の測定機に置き換えることで検査時間を短くし更に人による誤差を少なくしたいという声を頻繁にお聞きするようになって来ました。
ただ、3Dスキャナも万能ではなく、カメラ式ですと光沢のある部品については反射防止スプレーを塗布しなければ正確なスキャンができない等の問題もあり、製造現場での利用はまだ限定的となっています。
そこで今回は代表的なカメラ式の3DスキャナであるATOS Qを用いて、反射防止スプレーを塗布せずにどれほどのクオリティーでスキャンができるのかを調査してみたいと思います。
使用設備の仕様
■メーカー:ZEISS社
■型式:ATOS Q 12M
■仕様
・光源:LED
・センサー画素数:1200万点/ショット
・点間ピッチ:0.03~0.12mm
・焦点距離:490mm
・測定レンズ:MV100、MV170、MV270、MV500
・各レンズの測定精度:
MV100…0.007mm
MV170…0.009mm
MV270…0.014mm
MV500…0.026mm
・測定範囲:100mm×70mm~500mm×370mm/ショット
測定対象物
以下の4つの製品について、粉タイプの反射防止スプレーの有り・無しでのスキャンを実施し、取れ高を比較していきます。
①樹脂部品
【サイズ】300×150×30 mm
【色】黒色 【光沢】無し
②樹脂部品(シボ加工有り)
【サイズ】120×70×60 mm
【色】白色 【光沢】若干有り
③ハサミ
【サイズ】180×70×10 mm
【材質】樹脂+金属 【光沢】有り
④V字ブロック
【サイズ】75×30×60 mm
【材質】アルミ 【光沢】有り
測定結果
①樹脂部品(黒色/光沢無し)
<反射防止スプレー有り>
<反射防止スプレー無し>
<3Dスキャンデータ>
②樹脂部品(白色/光沢若干有り)
<反射防止スプレー有り>
<反射防止スプレー無し>
<3Dスキャンデータ>
③ハサミ(樹脂+金属/光沢有り)
<反射防止スプレー有り>
<反射防止スプレー無し>
<3Dスキャンデータ>
④Vブロック(金属/光沢有り)
<反射防止スプレー有り>
<反射防止スプレー無し>
<3Dスキャンデータ>
まとめ
以上のように反射防止スプレー無しの3Dスキャンでもある程度の形状データの取得が可能であることが分かりました。ただし、エッジ部分にはノイズがより多く発生して穴抜けのデータになっていた箇所もありましたので、データの取り扱いには注意が必要かと思います。
今回の調査ではATOS Qを用いましたが、3Dスキャナのメーカー・機種によってはさらにより多くのノイズが発生する可能性もあります。
時間が経つと消えて無くなる昇華タイプの反射防止スプレーもありますので、粉タイプのスプレーはNGだがきれいなスキャンデータが必要という場合には有効かと思います。
弊社では幅広いご要望にお応えできるよう、様々な種類の3Dスキャナと反射防止スプレーをご用意しております。無償トライも実施しておりますので、まずはお気軽にお問合せください!