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樹脂成形品の形状評価への3Dデジタイザの活用

近年、樹脂材料の高機能化によって自動車を含め様々な工業製品に樹脂製の部品が使用されるようになってきました。そうした樹脂部品の作製方法として射出成形が多く採用されておりますが、ソリやヒケなどの成形不良が問題になることも多く、寸法や形状の検査はなくてはならない工程の一つになっています。

弊社及びグループ会社では、20年以上前から樹脂成形品の寸法検査を受託サービスとして行っており、検査方法についての検証も行ってまいりました。現時点ではプローブを用いた接触式の三次元測定機が主流になっておりますが、光やレーザーを用いた非接触式の3Dデジタイザの性能も年々良くなってきており、用途によっては三次元測定機よりも有益な情報を得ることができることもあります。

そこで今回のブログでは、樹脂成形品の形状評価への3Dデジタイザの活用についてご紹介したいと思います。

三次元測定機と3Dデジタイザの比較

三次元測定機と3Dデジタイザ(※パターン光)についての測定機の概要は以下の通りです。

三次元測定機

プローブの先端に鉄・ルビー・セラミック等でできた球形状のスタイラスが付いており、測定物にプローブを接触させて三次元の座標値を取得します。

取得した座標値を用いて線・円・平面等の要素を生成し、寸法・幾何公差の評価を行います。

3Dデジタイザ

測定物に縞模様のパターン光を照射し、三角測量の原理を用いて反射光から座標の点群データを取得します。
(色情報を同時に取得できるCCDカメラを内蔵している装置もあります。)

取得した座標値を用いた寸法公差・幾何公差の評価以外にも、設計値との照合やリバースエンジニアリング用のデータとしての利用も可能です。

それぞれの測定機の特徴を表にまとめました。高い測定精度を求めるのであれば三次元測定機になりますが、樹脂成形品の成形不良の評価が目的であれば3Dデジタイザの方が様々な利点があります。

3Dデジタイザを用いるとどのようなアウトプットができるのか、㈱キーエンス製のVL-570 を例にご紹介します。

3Dデジタイザの装置仕様と作業手順

■装置名:3Dスキャナ型三次元測定機
■メーカー:㈱キーエンス
■型式: VL-500
■本体の仕様
・測定光:パターン光
・測定精度:±10 μm
・繰り返し精度:2 μm
・自動XY連結測定範囲:φ500×H200mm
・解像度:400万点・1600万点
・その他:色情報の取得

3Dスキャンとデータ作製の手順は以下の通りです。

手順①

光沢の強い測定品や黒色の測定品については、3Dデジタイザ用のスプレーで白い粉を噴霧。条件設定(光源の強さ、回転角度、撮影枚数etc.)を行い、3Dスキャンを開始。

手順②

測定品の表・裏の3Dスキャンを行い、二つのデータを合成。座標系をデータム通りに設定。

3Dスキャンデータを使用した各種検査

設計データとの照合・比較

設計データ(3DCAD)をインポートして3Dスキャンデータ(STL)と照合することで、カラーマップを出力することができます。カラーマップから樹脂成形品の成形不良を視覚的&直感的に判断することが可能です。

設計データとの偏差を数値で出力。

任意の断面線に対して設計データと3Dスキャンデータの差異を2Dで測定。

寸法・幾何公差の測定

VL-500では一般的な三次元測定機で測定できる寸法・幾何公差のほぼ全ての測定に対応しています。

寸法測定

円の直径や中心座標値、点と点の距離等の様々な計測を行うことが可能です。

幾何公差測定

各種の幾何公差を出力できるだけでなく、平面度はカラーマップ表示により歪みのバラツキを可視化できます。

まとめ

以上のように、3Dデジタイザを樹脂成形品の寸法検査に使用するメリットとしましては、ソフトウェア上で3Dスキャンデータから寸法・幾何公差の測定ができるというだけでなく、設計データと照合することで形状の微妙な不良箇所を可視化することができるという点にあります。

ただ、三次元測定機の測定精度には及びませんので、検査の目的に応じてこの2種類の測定機を使い分けることで、樹脂成形品についてより多くの情報を得ることができるものと思われます。

3Dデジタイザを使用して具体的にどのようなアウトプットができるのか、お客様のサンプルでのトライ測定も行っておりますので、お気軽にお問合せください。

こちらの情報は2024年4月3日時点の情報です。

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